クラシック音楽の巨匠たちは「天才」と呼ばれますが、その人生を振り返ると決して順風満帆ではありませんでした。彼らも人間らしく悩み、失敗し、ときに周囲と衝突しながら音楽を生み出していました。そうした背景を知ると、作品の響きがより身近に感じられ、リラックスBGMや睡眠音楽として聴くときにも新たな味わいが生まれます。
この記事では、モーツァルト、ベートーヴェン、バッハ、ショパンといった巨匠たちの失敗エピソードと名曲を「歴史コラム」として紹介します。さらに近年注目を集める528Hzの音楽についても、取り上げます。科学的に効果が証明されているわけではありませんが、「癒しの周波数」と呼ばれて親しまれる理由を解説します。
モーツァルト|大司教との確執と経済的不安
モーツァルトは幼少期から「神童」と呼ばれ、父レオポルトとともにヨーロッパ各地で演奏旅行を行いました。宮廷や貴族から絶賛され、まさに“若き天才”の名を欲しいままにしました。
しかし成人後は順風満帆とはいきません。仕えていたザルツブルクの大司教コロレドとの確執は有名です。待遇や創作の自由をめぐって意見が対立し、最終的にウィーンへ移ることになりました。「尻を蹴られて解雇された」という逸話も伝わっています。
経済面でも苦労がありました。ウィーンでの生活は華やかに見えつつも収入は不安定で、借金の記録が何度も残っています。豪邸や馬車に浪費したという話は誇張の域を出ませんが、経済的に苦しかったのは事実です。
こうした不安定な時期に作曲されたのが「ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466」です。モーツァルト作品には珍しく暗く緊張感のある曲調で、同時代の人々に衝撃を与えました。今日では映画『アマデウス』にも登場し、不安や緊張を抱える心を映し出す音楽として人気です。
落ち着きを取り戻したいときのリラックスBGMとして聴く人も多い名曲です。
ベートーヴェン|難聴と孤独、多すぎる転居
「楽聖(非常にすぐれた作曲家・演奏家。音楽界の偉人。)」と呼ばれるベートーヴェンも、失敗と苦悩の連続でした。28歳頃から難聴の兆候が現れ、30代には深刻化します。1802年には絶望の中で「ハイリゲンシュタットの遺書」を書き、「音楽家として生きられない」と嘆きました。しかし、その後に誕生したのが「交響曲第3番 英雄」。苦悩を力強さに変えた象徴的な作品です。
人間関係でも苦労しました。気難しい性格から支援者や友人と衝突することが多く、孤独に悩むこともありました。ウィーン市内だけで十数回、全体では数十回にわたって転居を繰り返したとされ、安定した生活を送ることはできませんでした。「30回以上引っ越した」という逸話もあり、移転が多かったことが複数の史料で確認されています。
こうした背景を知ると、『英雄』の力強い響きも単なる勇ましさではなく、逆境に立ち向かう強靭な意志として感じられます。ストレスや不安を乗り越えたいときのBGMとしておすすめできる一曲です。
バッハ|無断旅行とけんか騒動
音楽教室に貼られているバッハの肖像画は、厳格で威厳ある偉人のイメージが強いかもしれません。ところが若き日のバッハは、音楽への情熱があふれるあまり規律を破ることもありました。1705年、アルンシュタット教会のオルガニストだったバッハは4週間の休暇を申請してリューベックへ旅立ちますが、実際には約4か月も滞在してしまい、無断で延長したとして雇い主に叱責されています。学びたいという強い意志が裏目に出た、若き日の“失敗談”です。
さらに当時、教会オルガニストとして合唱団の演奏や礼拝音楽を指導・伴奏していたバッハは、合唱団の生徒と口論になり、ついには殴り合いにまで発展。裁判所に呼び出される騒動へとつながりました。信仰心の厚い音楽家というイメージとは裏腹に、若き日のバッハには激情型の一面もあったのです。
先生と生徒という関係でありながら拳を交え、裁判沙汰にまでなる――そんな尖った時期もバッハにはあったのですね。
そんな彼の自由で奔放な精神が表れているのが「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」。規律と即興性が混ざり合うダイナミックな一曲で、解放感を味わいたいときのBGMにぴったりです。
ショパン|恋愛と演奏スタイルの葛藤
ショパンは1836年頃から作家ジョルジュ・サンドと関係を持ち、約10年間交際を続けました。破局は1847年であり、「前奏曲第15番『雨だれ』」はそれ以前の1838年にマジョルカで作曲されています。したがって破局の心境を直接反映したわけではありません。ただし、降り続く雨を思わせる伴奏や切なげな旋律が「別れや孤独を連想させる」と語られることは多く、今日では睡眠音楽やリラックスBGMとして人気です。
ちなみに恋人ジョルジュ・サンドと別れた後は「彼女の犬まで僕を嫌っている」と嘆いた。
また、ショパンは大ホールでの演奏をほとんど行わず、パリの社交界のサロンを主な活動の場としました。若い頃から呼吸器が弱く、結核に苦しんだことでも知られ、体力的に虚弱だったのです。さらに友人の日記などから緊張しやすい性格などの記述があり、大観衆の前での演奏は精神的負担が大きかったと考えられています。だからこそ、限られた人々の前で演奏するサロンという場で、本領を発揮した音楽家でした。
偉人の失敗とクラシック音楽の雑学
偉人たちの音楽の背景には失敗や人間らしいエピソードが数多く隠されています。
- モーツァルト: モーツァルトは「天才」と称されながら、生活は経済的に苦労の連続でした。その一方で、家族への手紙でお尻やオナラの話を延々と書き連ねるほど驚くほど子どもっぽい一面も。なぜ遠く離れた家族への手紙にお尻やオナラの話を延々と書くのか?「天才」とは常人には考えられない感覚をもっているのでしょうね。
- ベートーヴェン: ベートーヴェンは大の風呂好きとして知られています。しかし当時の貸家には今のような浴室はなく、彼は部屋に桶や洗面器を持ち込み、大量の水を頭からかぶる“即席入浴”をしていました。そのため床は水浸し、下の階に水漏れすることもあり、大家からたびたび苦情を受けています。あまりにワイルドな入浴法がトラブルの原因だったのです。
- バッハ: 20人の子どもの父親で、音楽一家を築いたことは史実です。もともとバッハ一族は音楽家ぞろいで、さらに息子たちの中からもカール・フィリップ・エマヌエルやヨハン・クリスティアンといった後世に名を残す作曲家が生まれました。まさに“音楽のDNA”を代々受け継いだ一家だったのです。
- ショパン: ショパンは若い頃から呼吸器が弱く、結核に苦しんだことが知られています。咳や発熱を繰り返し、療養のために南欧や保養地へ滞在した記録も残っており、その虚弱体質が演奏活動を制限した大きな要因となりました。サロン演奏を好み、大ホールでの緊張を避けた。病弱な体質も活動スタイルに影響しました。ショパンの音楽は、大ホールで鳴り響く交響曲的なものではなく、ピアノ独奏を中心に、繊細で親密な表現を特徴としており、まさにサロンのような小規模空間で映えるスタイルでした。
こうしたエピソードを知ると、クラシック音楽が「完璧な天才の産物」ではなく、人間味あふれる物語とともにあることがわかります。
雑学|528Hzは“癒しの周波数”と呼ばれる
528Hzという周波数は「癒しの周波数」「愛の周波数」と呼ばれることがあります。科学的に特別な効果が証明されているわけではなく、公的機関や学術レビューでも裏付けは見つかっていません。ただし柔らかい音色として心地よさを感じる人が多く、リラックスBGMや瞑想音楽、ピアノ曲の調律に取り入れられることがあります。
特別な効果を期待するよりも、「自分が落ち着ける音の一つ」と考えるのが安心です。クラシック音楽や自然音とあわせて取り入れると、自律神経を意識したセルフケアの一助になります。
まとめ|偉人の失敗と音楽がくれる癒し
モーツァルト、ベートーヴェン、バッハ、ショパンといった偉人たちは、多くの失敗や挫折を経験しました。しかしその過程で生み出された音楽は、現代に生きる私たちに癒しを与え、リラックスBGMや睡眠音楽として心を支える存在です。
528Hzのような雑学をきっかけに、音楽をただ聴くだけでなく「背景を知って楽しむ」ことができれば、日々のリラックス時間もより豊かになります。ストレスや不安で揺れる日々の中に、彼らの音楽を取り入れてみませんか?
参考文献(出典)
モーツァルト
- Wikipedia日本語版「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」: https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
- 日本経済新聞「音楽の都ウィーン散策(前編)」: https://art.nikkei.com/magazine/3178/
ベートーヴェン
- Wikipedia日本語版「ハイリゲンシュタットの遺書」: https://ja.wikipedia.org/wiki/ハイリゲンシュタットの遺書
- 東京藝術大学 Art Plaza「西洋クラシック作曲家と日本史を比較」: https://artplaza.geidai.ac.jp/sights/16357/
バッハ
- Wikipedia日本語版「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」: https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
- Classical-Music.jp「クラシック音楽の魅力」: https://classical-music.jp/
ショパン
- Wikipedia日本語版「フレデリック・ショパン」: https://ja.wikipedia.org/wiki/フレデリック・ショパン
- 音楽之友社「作曲家の文法を知る=アナリーゼ!」: https://www.ongakunotomo.co.jp/web_content/senmonsyo/09.php
雑学|528Hzについて
- Wikipedia日本語版「ソルフェジオ周波数」: https://ja.wikipedia.org/wiki/ソルフェジオ周波数
- All About「ヒーリング音楽と周波数の関係」: https://allabout.co.jp/gm/gc/477859/
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。医学的な診断や治療を行うものではありません。体調に不安がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。