気候変動からデジタルコンテンツまで様々な刺激、食事の偏り、睡眠不足、時間に追われた生活などから「ストレス」と「疲労」が蓄積し、血流の悪化、免疫力の低下、血圧上昇などの症状が出て、心身に悪影響を及ぼす方が増えています。
このような不調の原因や悩みを改善する鍵は『副交感神経優位』という状態にあり、効果的に自身をケアできます。
『副交感神経優位』の状態とは何かを解説、日中夜の生活習慣、食べ物や飲み物、ストレッチやセルフメンテナンスを通じて血流やホルモンバランスの改善までつながる実践的な方法を詳しくご紹介します。「副交感神経優位」の状態でストレスを効果的に軽減していくことが可能です。
副交感神経優位とは?
副交感神経優位とは、リラックスし、心身を落ち着かせる状態です。
●交感神経と副交感神経の役割
神経系 | 役割 |
---|---|
交感神経 | ストレスや危険に反応 |
副交感神経 | リラックス、エネルギーの蓄積、回復 |
●「交感神経が優位」になると起きる反応
反応 | 効果 |
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心拍数・心収縮力の増加 | 血液を全身へより速く送り出す |
気管支の拡張 | 肺への酸素取り込みを向上 |
瞳孔散大 | 視野を広げ、外部情報を取り込みやすくする |
血管収縮(皮膚・内臓)/血管拡張(骨格筋) | 筋肉へ優先的に血流を供給 |
発汗促進 | 体温調節と同時にストレス応答 |
肝臓でのグリコーゲン分解 | 血糖値上昇 ⇒ 迅速なエネルギー供給 |
消化管運動・分泌の抑制 | 消化よりも運動にリソースを振り向ける |
アドレナリン・ノルアドレナリン分泌促進 | 全身的に交感神経作用を増幅 |
●「副交感神経が優位」になると起きる反応
反応 | 効果 |
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心拍数・心収縮力の低下 | 抑制的作用により脈拍を減少 |
気管支の収縮 | 必要最小限の換気状態へ |
瞳孔縮小 | 近くの物に焦点を合わせやすくする |
唾液・消化液分泌の促進 | 唾液腺・膵臓・胃腺の活性化 |
消化管運動の亢進 | 蠕動運動を増加し、消化・吸収を助ける |
膀胱収縮 & 括約筋弛緩 | 排尿促進 |
血管拡張(特に外性器・消化管) | 消化や性機能をサポート |
肝臓でのグリコーゲン合成促進 | 血糖を取り込みエネルギーを貯蔵 |
「副交感神経優位」もたらす作用と健康への影響
作用 | 健康への影響 |
---|---|
ストレスホルモンの減少 | 精神的な安定、腸内環境の改善 |
心拍数の低下と血圧安定 | 心血管系の健康維持、心臓病リスク低減 |
消化促進 | 栄養素の吸収効率化 |
筋肉の緊張緩和 | 慢性的な痛みや緊張の緩和、運動能力向上、血流改善 |
神経系のリラックス | 睡眠の質向上、集中力増加 |
ホルモンバランスの調整 | 月経周期の安定、PMS・更年期症状の緩和 |
実践方法
ストレスの時間が長く、リラックスの時間が短い
現代は仕事や人間関係のストレスが多く、副交感神経が優位になる時間が短くなりがちです。副交感神経が優位な時間を増やせる方法を紹介します。
(1)呼吸方法 ⇒ 副交感神経優位
効率的に副交感神経を優位にする呼吸法です。
- 鼻からゆっくりと息を吸い込み、お腹が膨らむのを感じながら3〜4秒かけて深く吸い込む。
- 吸った息を2秒ほど止め、体全体がリラックスしていることを意識する。
- 口からゆっくりと息を吐き出し、吸う時間の倍、6〜8秒かけて行う。
- 一連の呼吸を数回繰り返す。
(2)食事方法 ⇒ 副交感神経優位
副交感神経を優位にするには、食事方法の見直しも非常に効果的です。
食事のタイミング
規則正しい時間に食事を摂ることで、体内リズムが整い、自律神経のバランスが取れやすくなります。また、食事はゆっくりとよく噛んで食べることが重要です。これにより、消化器官への負担が軽減され、リラックス感が得られます。
食材の選び方
新鮮な野菜や果物、全粒穀物、質の良いタンパク質を摂取することで、体に必要な栄養素をバランス良く補給できます。
食事の環境
ゆったりとした雰囲気で、テレビやスマートフォンから離れて食事に集中することで、心が落ち着き、食事そのものを楽しむことができます。このような時間は心身ともにリラックスさせ、自然と副交感神経が優位になりやすいです。
飲み物
カフェインやアルコールの摂取は控えめにすることが望ましいです(カフェイン摂取の1日の目安は200mg:ドリップコーヒー2杯。14~16時までを推奨)。これらは交感神経を刺激し、リラックスを妨げる可能性があります。ハーブティーやカフェインフリーの飲み物を選ぶと良いでしょう。
合わせて忘れずに水分を補給しましょう。十分な水分を摂ることで、体内の代謝が促進され、全体的な健康状態が改善されます。
(3)体の使い方 ⇒ 副交感神経優位
体の使い方を工夫して副交感神経を優位にします。
姿勢と体を動かすこと
姿勢が悪いと、筋肉に余計な負担がかかり、ストレスを感じやすくなります。背筋を伸ばし、肩の力を抜くことで、体が緊張から解放され、副交感神経が優位に働きやすくなります。
長時間同じ姿勢でいることを避け、こまめに休憩をとり、体を動かすことを心がけましょう。これにより、体の疲労が軽減されます。
メンテナンス方法
こまめにメンテナンスすると効果的です。
方法 | 説明 |
---|---|
ストレッチ | 全身のストレッチをする。特に首、肩、背中、腰をゆっくり伸ばす。 |
マッサージ | 指で足裏や手のひらのツボを刺激。 |
緩やかな運動 | ウォーキング、ヨガ、太極拳などの運動。筋肉の柔軟性を高める。 |
入浴 | 温かいお風呂に浸かる。温熱効果で筋肉をリラックスさせる。 |
(4)心の持ち方 ⇒ 副交感神経優位
心の持ち方は、副交感神経を優位にするための重要です。ポジティブなマインドセットを持つことが大切です。まず、感謝の気持ちを持つことから始めてみましょう。
自己肯定感を高めることも重要です。自分の良い部分に焦点を当て、自己評価を高めることで、ストレスを軽減し、心の安定を図ることができます。
最後に、笑顔を忘れないことです。笑うことは、体の中で幸福ホルモンを分泌するとされており、心の余裕を生み出します。笑顔は、周囲とのコミュニケーションを円滑にし、ポジティブな感情を伝播させます。
●心の持ち方のコツ
方法 | 説明 |
---|---|
ポジティブな 思考 |
ネガティブな考えに囚われた時は、感謝できることをリストアップして前向きな視点を取り戻す。 |
完璧主義を 控える |
自分自身に優しさと思いやりを持ち、失敗を学びのチャンスと捉える。 |
小さな 成功体験 |
日常生活での成功体験を積み重ねることで自己効力感を高める。 |
趣味や 好きなこと |
趣味や好きなことに時間を使い、心から楽しむ。 |
(5)睡眠のとり方 ⇒ 副交感神経優位
睡眠のとり方も工夫することで副交感神経を優位にできます。寝る前の準備が大切ですので、環境作りも合わせて確認しましょう。
自身の準備
行動 | 効果 |
---|---|
寝る1〜2時間前のリラックス | 副交感神経を優位にし、自然な眠気を誘発 |
熱すぎないお風呂に入る | 体温を下げ、自然な眠気を誘発 |
軽いストレッチやヨガ | 筋肉の緊張をほぐし、リラックス促進 |
カフェインやアルコールの摂取を控える | 交感神経の刺激を抑え、睡眠の質を向上 |
寝る直前の激しい運動を避ける | 体温上昇と興奮状態を避ける |
デジタルデバイスの使用を控える | メラトニンの分泌を促し、体内時計の調整 |
読書などの静かな活動 | 心を落ち着かせ、質の高い睡眠を促進 |
適した寝具
要素 | 重要性 |
---|---|
マットレスの硬さ | 体圧の均等分散を促し、寝返りを減少 |
枕の高さと硬さ | 首と肩の負担軽減、自然な姿勢の保持 |
素材 | 通気性の向上、温度と湿度の調整 |
環境づくり
要素 | 推奨設定・内容 |
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室温 | 20〜22度 |
湿度 | 50〜60% |
寝室の環境 | 静かで暗い、遮光カーテンを使用 |
リラックス効果 | ラベンダーやカモミールのアロマ |
(6)やめるべき悪習慣
- 過度なカフェイン摂取(1日の摂取目安は200mg:ドリップコーヒー2杯まで。14~16時までを推奨)
- 過度のアルコールや喫煙
- 夜遅くまでのスマートフォンやパソコンの使用
- 不規則な生活
- ストレスの多い環境
まとめ
副交感神経が優位になると、リラックスや休息が促進され、様々なメリットがあります。ただし、過度になると血圧の低下により立ちくらみやめまいが生じ、精神的にもやる気の喪失や無気力感を感じることがありますので、交感神経とのバランスを保つことが重要です。現代人は様々な刺激から交感神経が優位になりがちですが、よく自身の状態を確認しつつ、自律神経のバランスを整えていきましょう。
2025年5月8日
自律神経を計測できるアプリ「カルテコ」 運用企画部
平井真司